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第17回 文化庁メディア芸術祭 で私的によかった作品 5選



2013年度のメディア芸術祭、 第17回 文化庁メディア芸術祭で私的によかった作品のまとめ。

トラヴィス「ムーヴィング」

バンドメンバーの白い吐息の中で、シンプルなシルエットが動き回り物語が紡がれるPV。驚いたことに特殊技術を使わず、-1ºCのスタジオで震えながら、白い息にプロジェクタでキャラクターを投影し、カメラで直接撮影しただけの作品なのだ…!合成ではなく実体なので、吐息のパーティクルがとても美しい。プロジェクタの光で「投影」するのではなく、「抜き出す」という表現が新鮮に感じた。シンプルだが飽きさせない演出がニクい。

Situation Rooms

これぞ没入型インスタレーションという作品。被験者は、全20キャストの中からストーリーを選び、ヘッドホンを付け、ハンドルの付いたタブレット端末を持って、大規模な映画セットの中に入る。主人公の言葉を聴きながら、映画セットの中を進み、主人公たちの「武器」に関する経験を追体験する。命の臨するテーマの中で緊迫した声で、"stop." と言われる瞬間が堪らなく緊張感を煽る。あーーー、実際に体験してみたかったー。(映像展示でした)

The Big Atlas of LA Pools

ビジュアライゼーションで一際光を放っていた作品。オープンデータを元に、ロサンゼルスにあるプールをひたすらトレースし、マッピングした作品。データが43,000個以上あるが機械化せずにクラウドソーシングを用いて、手でトレースしているため、非常にトレース線がスマートだ。ビジュアライゼーション、オープンデータ化、クラウドソーシングの可能性を感じると同時に、恐怖を感じる。特にプールのある各家屋の航空写真のデータブックは寒気がした。

Sound of Honda / Ayrton Senna 1989

この作品は、会場で思わず涙ぐんだ。今は亡きアイルトンセナの走行データを元に、サーキットでセナの走行路と走行音を再現するプロジェクト。車の姿は見えず、音と軌跡の光だけなのに、あたかもそこにセナの幻影を見るようだった。もうこの世には存在しない瞬間が、24年前のデータからで再現される。タイムマシンをくぐったようで何とも言えない感覚。Learn to be a Machine︱DistantObject #1と一緒に「そこに在る」とは何なのか考えさせられた。

Airy Me

ある意味この作品が今回のベストなのかもしれない。ずっと頭の中にひっかかって、家に帰っても10回くらい観た。私的にざっくり言うと「オーガニックなAKIRA」なのだ。実験体の少年とそれに接する看護婦の物語。ふわふわ揺れる音、柔らかく彩りのある線の中で、躍動感のあるなめらかなカメラワークで、グロテスクで哀しい表現が展開される。憧れと実際、力を得たことによる喜びと虚しさに胸が痛くなる。ちなみにうさぎの存在が飲み込めないので、誰か解説してください。


会期は2014年2月5日(水)~2月16日(日)

まだ続いているので、まだ行っていない方は是非とも足を運んでみては!

文化庁メディア芸術祭 http://j-mediaarts.jp/